Q私は実の子供から毎日ひどいことを言われ続けています。こんな子供には一銭も遺産を渡したくありません。どうしたらよいでしょうか。
著しい侮辱であれば,推定相続人廃除の手続きを取ることができます。
〔解説〕
推定相続人(この場合子供)が被相続人を虐待したり,これに重大な侮辱を加えたとき,または相続人にその他著しい非行があったとき,被相続人は家庭裁判所にその推定相続人の廃除を請求することができます(民法892条)。廃除の意思表示は,遺言で行うこともできますが,この場合,遺言執行者はその遺言が効力を生じた(つまり被相続人死亡)後,遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければなりません(民法893条)。
廃除の制度は,これが認められれば遺留分(被相続人の財産の中で,法律上その取得が一定の相続人に留保されていて,被相続人による自由な処分に制限が加えられている持ち分的利益)すら剥奪されるという強力な効果を有するものですから,廃除事由に該当するかどうかの判断は,当該行為が被相続人との家族的共同生活関係を破壊させ,その修復が著しく困難なほどのものであるかどうかという基準で判断されます。
〔東京高決平成4年10月14日〕は,推定相続人(長男)が,被相続人(母)に対して,「80歳まで生きれば十分だ,千葉へ行って早く死ね」「火事になって死んでしまえばいい」「病気で早く死ねばいい」などの言動をなしたことが,一過性のものではないとして,「重大な侮辱」があったことを認めました。
廃除の申立て資格を有するのは被相続人であり,他の推定相続人が申立てすることはできません(民法893条)。遺言により廃除の意思表示をしたときは,遺言執行者が申立人となります(民法893条)。管轄は,被相続人の住所地または相続開始地です。
廃除の調停が成立し,または審判が確定すると,被廃除者である相続人は,直ちに相続権を失います。
廃除の効力は,当該被廃除者の相続権を剥奪しますが,被廃除者の子は被廃除者を代襲して相続人となることができます(民法887条②)。