Q金銭を貸し付けていた相手が死亡し,相続人も全員相続放棄をしています。 相続人の相続放棄を詐害行為として取り消すことは可能ですか。
判例は,相続放棄は詐害行為の取消権行使の対象にはならないとしており,詐害行為として取り消すことはできないとしています。
〔解説〕
この判例は,相続債権者が相続人の相続放棄につき民法424条の詐害行為取消権を主張した事例について,①詐害行為取消権の行使の対象となる行為は,積極的に債務者の財産を減少させる行為であることが必要で有り,相続放棄は消極的にその増加を妨げるにすぎないこと,②相続放棄のような身分行為については他人の意思ににより強制されるべきではなく,もし,相続放棄について詐害取消権の行使を認めるとすると,相続人に対し相続の承認を強制することになることを理由として,相続放棄は詐害行為取消権の対象とならないとしています。
また,相続人の債権者が相続人の相続放棄について詐害行為取消権及び権利の濫用の主張をした事例において,いずれの主張も認めていません(最二小判昭和42年5月30日判時487号40頁)。