Q私は父死亡後,高齢の母の生活を支えるため仕事を辞めて同居し,母が認知症となった後はその療養看護に努めてきました。同居期間は15年であり,母が認知症となって8年になります。母が死亡した場合,寄与分は認められるでしょうか。
お母さんの認知症状が出て後の療養看護については,親族の扶養義務を超える特別の寄与と認められると考えられます。付添婦を雇用した場合に要したであろう料金を算定して,その金額と遺産全額などを考慮して,具体的な寄与分が算出されます。
〔解説〕
寄与が認められる主な類型としては以下のものがあります。
(1)家業従事型 被相続人の事業に対して無報酬あるいはそれに近い状態で従事し,労務を提供して,相続財産の維持又は増加に寄与した場合
(2)財産給付型 被相続人に対して,財産上の給付あるいは利益を給付して相続財産を増加させ,又は債務の返済等による被相続人の財産の維持に寄与した場合
(3)療養看護型 被相続人の療養看護を行い,医療費や看護費用の支出を避けることによって相続財産の維持に寄与した場合
(4)扶養型 被相続人の生活費を賄い,被相続人の支出を減少させた結果として相続財産の維持に寄与した場合
(5)財産管理型 被相続人の財産管理を行い,被相続人の管理費用の支出を免れさせる等負担を減少させた結果として相続財産の維持に寄与した場合
(6)競合型 上記の各類型が競合した場合
一般的には,家業従事型と他の寄与態様が競合する事例が多いようです。ただし,被相続人に対する貢献があっても,その行為により「被相続人の財産の維持又は増加」したことが必要です。また,寄与は「特別の寄与」でなければなりません。被相続人と相続人の身分関係に基づき通常期待される程度を超える寄与でなければならず,単に兄弟姉妹の中で自分1人だけが親の面倒をみたとの理由のみでは,「特別の寄与」と評価されるには足りません。