Q 子ども(公立小学生)が,学校の授業の水泳でプールに飛び込み,プールの底で頭を打ってしまって後遺症が残るけがをしました。学校や先生の責任を問うことはできますか。
飛び込みが、指導書に定められたものであるか,子どもさんのその日の体調とその把握を学校や教師がおこなっていたか,事故後の学校の対応がどうであったか等から総合的に判断されます。責任が認められるかどうかもそれらの状況により異なってきます。
なお,責任を負うのは公立学校では,学校を設置した地方自治体(市町村あるいは区)であり個々の教師は負いません。
1 体育の授業中の事故
体育の授業に於いて教師には子どもの安全に配慮する義務があります。しかし,他方では起こりえるすべての危険を避けることは不可能です。その点のバランスをとる必要があります。水泳の飛び込みでは,次の点が問題となります。
(1)授業内容として適切ものとする義務に違反しないか。
飛び込み自体は,学習指導要領で認められていますので,飛び込みをさせたことについては,違反はしないと言えます。しかし,小学生として無理あるいは危険がある助走をつけた飛び込みであれば,この点が問題となると思います。
(2)生徒の健康状態や能力を把握する義務に違反しないか。
教師は,生徒がその日の健康状態を把握して,発熱をしていたり負傷をしていれば飛び込みはもちろん水泳の授業をさせるべきではないと言えます。
また,飛び込み以前に水泳能力が十分であったかどうかも問題となります。
子どもさんが負傷した原因によりますが,そのような事実関係から教師の義務違反,つまり過失があったかが判断されます。
(3)事故後の救護措置,応急措置に関する義務に違反しないか。
事故があった時点で,速やかに発見をして,救護して,養護室等での措置がが正しく行われたかどうかです。さらに,事故との症状によっては養護室での応急措置では足りずに,医療機関に救急搬送していれば,後遺症がなく回復できたか,あるいは程度を軽減する可能性があったかどうかです。
2 具体的な判断
事故が,どのようにして起きたのか,どうすれば発生を防止することができたかどうかで,責任を問うことができるのかが,決まってきます。そのためには,事故状況の把握が不可欠ですが,学校の授業中の事故であり,証人が教師と生徒であることから事実調査の困難さがあることは否定できません。
3 過失相殺
過失相殺の対象となる年齢は5,6歳からと考えられています。小学生であっても,飛び込みの授業を受けることができる年齢ですから高学年と考えられます。
子どもさんが,仮にふざけたりあるいは教師の指示に従わずに,危険な飛び込み方法をしたと言うことになれば過失相殺として損害額の減額が行われることがあり得ます。
4 損害賠償
民事裁判として後遺症に対する損害賠償請求を地方自治体(市町村あるいは区)に対して行うことになります。なお,水泳事故に関しては,頭部打撲あるいは溺れたことによる脳に対する低酸素状態から,麻痺や高次脳機能障害が起こることがあり得ることは交通事故と同様です。