Q夫婦げんかをしたときに、離婚届用紙にサインしてしまいました。夫はその用紙をどこかにしまっているようです。勝手に離婚届を出されないでしょうか。
①1日も早く、離婚届を取り戻して破棄しましょう。
②本籍地の役所に離婚届の不受理の申出(不受理届)をしておくと、離婚届は受理されません。
③不受理届の用紙はどこの役所にもありますから、それをもらって早く出しておくことが望ましいでしょう。
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〔解説〕
(1)夫婦げんかの果てに勢い余って、離婚届に署名押印してしまうケースは実際上よく見かけます。離婚の無効が認められる場合は、婚姻の無効の規定が参考になります。民法724条では「人違いその他の事由によって当事者間に婚姻する意思がないとき」(同条1項)に婚姻は無効と明記されていますから、同様に「当事者簡易離婚の意思がないとき」、すなわち、当事者間に離婚意思の合意がないときは、離婚も無効と考えられます。判例でも当事者の意思に基づかない離婚は当然無効と判示しています。本件のような、当事者間で離婚意思のないままに、一方的に離婚届が提出された場合は、たとえその離婚届が受理されたとしても、その離婚は無効です。
(2)役所の戸籍係に離婚意思がなかったことを理由に戸籍の訂正を申し出ても、戸籍係には、離婚届の有効無効を調査する権限がありませんから、そのような申出だけでは離婚無効として戸籍の訂正はしてくれません。戸籍の訂正をするためには、離婚の無効を法的に明らかにする家庭裁判所の審判書又は確定した判決書を添付する必要があります。
(3)離婚が無効であると主張するには、まず家庭裁判所に家事調停を申し立てる必要があります。相手方の住所地の家庭裁判所所在地又は当事者が合意で定める家庭裁判所所在地が管轄地となります。調停手続きの結果、当事者間で離婚が無効であることについては争いがなく離婚無効の合意ができれば、家庭裁判所で調査の上、調停委員の意見を聴き、この合意が正当と認めるときは「審判」で離婚の無効を確認します。ただし、この審判に対しては利害関係人が2週間以内に異議を申し立てたときは、この審判は効力を失います。もし、2週間以内に意義の申立がないときは、この審判が確定し、戸籍係に戸籍の訂正をしてもらうことができます。