むさしの森法律事務所

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Q&A

Q私は事業に失敗し多額の借金を作ってしまいました。債権者から財産を守るため偽装離婚しました。債権者からの督促もなくなりましたので、離婚の撤回をしたいと思っています。偽装離婚の撤回は可能でしょうか。

[偽装離婚,詐害行為,離婚]


①偽装離婚しても、離婚としては有効に成立しているので、離婚の撤回はできません。
②債権者からの財産の差押えを逃れるために偽装離婚し、慰謝料の支払いや財産分与の合意ををしたとしても、詐害行為取消権を行使され、財産を取り戻されることがあります。
本質的な問題は別にあるはずです。偽装離婚を考える前にご相談下さい。ご相談はこちらへ(リンク)。

〔解説〕
(1)夫婦の間に真実は離婚する意思がないのにもかかわらず、離婚届を提出する事例があります。
 婚姻が届出制度で行われているのは、社会的身分関係を第三者に公示して、身分的社会機能の安定を図ろうとするからです。当事者が自分たちの都合で偽装の事実を届けた上、再度自分たちの都合でそれを撤回しようなどという自分勝手な行為は社会に混乱を引き起こすだけであり、信義則上も許されることではありません。
 判例でも、「方便のために離婚の届出をしたが、右は両者が法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてなしたものであり、このような場合、両者の間に離婚の意思がないとは言い得ない」として方便のための偽装離婚であっても、その離婚は有効に成立し、離婚撤回は認められません。

(2)債権者から財産の差押えを逃れるために偽装離婚して財産分与、慰謝料として財産を配偶者に引き渡し、財産の保全を図るケースがあります。このような場合、債権者から詐害行為取消権(民法424条)が行使される可能性があります。原則的には、離婚に伴う財産分与について、判例では「民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大で、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情にない限り、詐害行為にはならない」と判示しています。しかし、「特段の事情」があれば、財産分与といえども詐害行為の対象になり、偽装離婚による財産分与の過大であると判断された部分は詐害行為として取消の対象になります。同様に、過大な慰謝料の支払いの合意が有責配偶者が負担すべき額を超えたものと判断される場合には、その負担すべき額を超えた部分については「慰謝料支払いに名を借りた金銭の贈与契約ないし対価を欠いた新たな債務負担行為というべきである」として詐害行為取消権の対象となるというのが判例です。
 したがって、偽装離婚では慰謝料原因が発生しているかどうかも疑わしいところですから、慰謝料の取り決めの多くが、詐害行為にあたると思われます。

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