Q 夫といろいろなことで衝突します。一緒に暮らしているのがうんざりしたので別居して離婚したいと思いますが、家を出て別居すると離婚に不利ですか。
①夫婦には協力して助け合っていく義務があるので、正当な理由がなく家を出て別居することは、同居義務違反なります。
②別居を強行すると相手方から同居の請求を求められることもあります。
③別居の継続は離婚理由の1つの要素になりますので、離婚については相手方に有利になります。
④別居する際には、子どもを連れていったほうが、離婚のとき子どもの親権がとりやすくなります。
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〔解説〕
(1)正当な理由がないのに別居を強行した場合、相手方配偶者は、別居している配偶者に対して同居を求める調停や審判の申立を家庭裁判所に起こすことができます。しかし、別居している配偶者に対してすべて同居の請求が認容されるものではありません。夫婦に共同生活を強いることが、かえって夫婦関係をこじらせ人間関係を破綻させるような場合は、同居請求を拒否する正当な理由があると判断されます。同居する意思もないのに、相手方を困らせて離婚条件を有利に運ぶために、あるいは離婚理由について相手方に非があると主張するために、同居の請求をする場合も珍しくありません。
(2)別居については、離婚原因としての「悪意の遺棄」に当たるかどうかが問題となります。夫婦同居生活を打ち捨て、一方的に出奔した場合は、客観的には「遺棄」している状態といえますが、単に家を出て別居を開始しただけでは悪意の遺棄にはなりません。悪意の遺棄というためには、家族を顧みないなど明示でも黙示でもいいので悪意を推測させるものが必要です。具体的には、病身の夫の下から出奔して、10年間何も積極的な働きかけをしなかった妻に対して悪意の遺棄を認めた判例があります。
(3)別居する際、気をつけなければならないのは子どものことです。未成年の子どもを相手方のもとにおいていったか、連れて出て行ったかによって、離婚が認められたときに、子の親権の帰属の問題に大きな影響があります。概ね裁判所は、子どもの生育環境が安定しているならばこれを変動させることは望ましいものとはみておらず、子どもを実際に育てている側が親権者に指定されることが多いのが実情です。