Q夫が蒸発して4年たちます。消息はまったくわかりません。離婚できるでしょうか。また、どういう手続きをとればよいですか。
①民法770条1項3号は、配偶者が「3年以上生死が不明」の場合を離婚原因にあげています。
②行方不明になった理由は問いません。
③なお、離婚訴訟における離婚原因としては、悪意の遺棄、婚姻を継続し難い重大な事由も加えておいたほうがよいでしょう。
④離婚は、調停をしないで、家庭裁判所に離婚請求の訴訟を起こします。訴状等については公示送達の手続きをします。
〔解説〕
(1)生死不明になった理由は問いません。家庭を嫌ったのか、首が回らないほど借金が重なったのか、愛人ができたのか、事件に巻き込まれたのか、そのような理由は何もいらないのです。また、生死不明になった原因についての過失も問いません。すなわち、夫婦げんかをして、配偶者に「出て行け」と怒鳴ったら、出て行ってしまい、それ以後、まったく音信が途絶えてしまったような場合でもかまわないのです。ただ、客観的に3年以上、生死がわからないということが必須要件です。本人からは連絡はないが知人が生きているのを見たとか、知り合いには連絡があるとかいうことでは、生死不明の要件を満たしません。
(2)生死がわからないというほどではなくても、長期に配偶者から音信がないということがあります。そのような場合、民法770条1項2号の「悪意の遺棄」ということで離婚理由を認めるべきです。携帯電話、パソコンによるメールなど簡便かつ安価な通信手段がとれる現代において、1年も蒸発した配偶者に対しては十分な悪意が推測できると考えてよいでしょう。
(3)離婚事件は基本的には調停前置主義ですが、本件のような相手方の居所が知れないときは、調停を申し立てる必要はなく、相手方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。相手方が所在不明ですから、訴状等については公示送達の申立をしなければなりません。公示送達の申立書を訴状と同時に提出します。