Q長年取引をしていた取引先に信用不安が生じています。うまい債権保全と回収の手段はありますか。---中小企業家支援は,むさしの森法律事務所へ
取引の基本契約書の締結(特に代金支払い時期)をする。
人的担保の確保をする。
物的担保の確保をする。
ということが考えられます。
1 取引の基本契約書の締結をするとはどういうことでしょうか。(クリックすると回答)
取引の基本契約はあらかじめ契約書を作成しておくことが望ましく,
可能であれば今からでも契約書を作成しておくべきです。
その中で,代金未払いの場合における納入済み商品の所有権の帰属(例として,代金決済完了まではいつでも納入商品を引き上げることができるとしておく)について明示しておくとよいと言えます。
なお,基本契約書作成に取引先が同意しないような場合には,今後の納品において代金決済完了まで所有権を留保することを条件とするという方法も考えられます。
2 人的担保の確保をするとはどういうことでしょうか。(クリックすると回答)
会社との取引の場合,その会社が破産等により支払い不能になってしまえば債権回収は実際上不可能になってしまいます。
そこで,会社の代表者や他の役員にあらかじめ会社の債務について保証人になってもらうことが有効です。
その際,その会社と連帯して保証してもらう連帯保証人になってもらうこと,また,取引が継続する場合には一定の枠内を保証してもらう根保証という形式をとることが実際上有効でしょう。
この際作成する保証契約書には役員個人の実印を押してもらい,印鑑証明書も出してもらうと万全です。
しかし,新たに連帯保証人となるのは,当人も相当なリスクを覚悟することから,容易ではなく,その点で,ためらうようであれば取引の継続をしない決断も考慮すべきです。
3 物的担保の確保をするとはどういうことでしょうか。(クリックすると回答)
人的保証は,保証人個人が会社の債務を担保する制度ですが,個人では信用不足であるならば,会社の債務を担保するために
会社所有の不動産あるいは会社代表者個人所有の不動産に抵当権を設定するという方法もあります。
その場合も,取引が継続するということであれば,一定の債務枠を担保する根抵当権という形をとることもできます。
この抵当権設定の際に注意すべきことは,たとえば,すでに金融機関の抵当権が設定されているような場合です。
その不動産の価値が設定済みの抵当権額を大幅に上回っていれば問題はありませんが,同程度あるいは下回っている場合には,
その不動産に抵当権を設定しても将来回収の見込みはないことに十分注意を要することになります。