Q小学生の息子が,休憩時間中に遊んでいて校内の階段の手摺りから落ちて大怪我をしました。学校に責任を追及できますか。---子ども・教育問題は,むさしの森法律事務所へ
学校の教師等には児童に対する安全配慮義務があります。
その安全配慮義務に違反すると考えられる場合には,学校の責任を追及することができます。
しかし,休憩時間ということで正規の授業中ではない特殊性があることから,教師等の安全配慮義務が否定されることもあります。
また手摺りから落ちた原因が,けんかやいじめ・校内ではやっていた一種のいたずら等の状況にもよります。
なお,手摺りからの落下が,学校設備の瑕疵(欠陥)による場合には,学校側の責任が認められます。
1 具体的な安全配慮義務とは何でしょうか。(クリックすると回答)
>学校は,息子さんを預かっているわけですから,抽象的には安全配慮義務を負います。
しかし,その安全配慮義務も具体的に考えていかなくてはなりません。つまり,危険の発生を予見する可能性と,それを防ぐことのできた可能性が前提として必要となります。
それらの可能性がある場合に初めて,安全配慮義務に違反したことになるのです。
2 休憩時間の特殊性とはなにでしょうか。(クリックすると回答)
正規の授業時間中は,教師の指導と管理下にありますが,休憩時間はそうではありません。
しかし,授業時間の間であることから一連の教育活動と同様と考えられます。
しかし,授業時間ではありませんから,教師等がそばに連れ添って監視することが当然に予定をされたり,義務づけされるわけではありません。
3 休憩時間中の安全配慮義務の内容はどうでしょうか。(クリックすると回答)
休憩時間中に,階段手摺りからの落下事故という危険の予見可能性があり,それを防止することができたかどうかにかかってきます。
それは事故の原因が,けんかやいじめ・校内ではやっていた一種のいたずらに基づくものであれば,突発的な事故ではありませんから,
学校としては,当然に予見する可能性があったと言えますから防止する義務があったと考えられます。
しかし,なかなか,けんかやいじめの徴候については発見が難しい点がありますので,情報を得る努力をしない者ほど,あるいはとぼける者ほど責任を追及されないという不公平な結果が起こります。
そこで,被害者救済の観点からは,階段手摺りからの落下は起こりやすいことから,日常的に児童にどこまで注意を呼びかけて事故あるいはいじめの防止に努めていたかを安全配慮義務の内容とすべきであると考えます。
(1)学校は,公立であれば設置者として国・地方自治体が負います。私立であれば教師の使用者として学校が使用者責任を負います。
(2)教師・校長は,公立であれば責任を負うことはありませんが,私立で児童に責任能力がない場合であれば代理監督者(民法第714条2項)として責任を負います。
(3)仮に,いじめあるいは集団暴行による事故であるとすれば,加害者児童が責任能力がある場合には本人が責任を負います。責任能力がない場合には,その親が監督義務者として責任を負います。
なお,責任能力がある場合にも親が責任を負う可能性があります。
被害者である児童にも手摺りからの落下に過失がある場合には過失相殺されて損害が減額される可能性があります。
たとえば児童が,ふざけて手摺りを滑り台代わりにして遊んで落下したような場合には,状況によっては大きく過失相殺される可能性があります。
6 損害賠償における男女差別についてはありますか。(クリックすると回答)
今までは,後遺障害あるいは死亡における逸失利益について幼児・児童・生徒について男女の賃金格差をどのように考えるか争点となっていました。交通事故に関しては,様々な工夫がされてその格差が解消されつつあります。