Q中学生の息子が,放課後に教室で赤い羽根の針を消しゴムに突き通してダーツごっこしていたところ,1人が投げたのが目に刺さり失明しました。学校に責任を追及できますか。---子ども・教育問題は,むさしの森法律事務所へ
その安全配慮義務に違反すると考えられる場合には,学校の責任を追及することができます。
しかし,放課後ということで正規の授業中ではないために教師の許可がなくて居残っていた場合は,原則として教師等の安全配慮義務が否定されます。
但し,無断で居残ってそのような遊びをしていたことが容易に発見できるような場合には,肯定される可能性があります。
また,生徒会あるいは部活動,自主的な学習等で居残りが許可による場合には,そのような危険な遊びをして事故の発生を予見する可能性があれば,教師等は責任を負うと考えます。
学校は,息子さんを預かっているわけですから,安全配慮義務を負います。
しかし,その安全配慮義務も具体的に考えていかなくてはなりません。つまり,危険の発生を予見する可能性と,それを防ぐことのできた可能性が前提として必要となります。
可能性がある場合に初めて,安全配慮義務に違反したことになるのです。
正規の授業時間中は,教師の指導と管理下にありますが,放課後はそうではありません。
生徒は,速やかに下校をすべきであるし,教師もそれを促すべきです。
従って,原則として放課後は,教師を初め学校側には安全配慮義務はないと言えます。
しかし,生徒会や部活動の必要性から,あるいは自主的な学習のため教師の許可を得て居残っていた場合には,状況は異なると言えます。
それは,教師が生徒が校内に居残っていることを知っているからです。
だが,それでも正規の授業時間ではありませんから,この場合でも事故が発生する危険性を具体的に予見できるような特段の事情が必要だと考えられます。
なお,教師がそばにいてくれたのなら未然に防げたのではないかと思うのが親心ですが,授業時間ではありませんから,
教師等がそばに連れ添って監視することが当然に予定をされたり,義務づけされるわけではありません。
3 休憩時間中の安全配慮義務の内容はどうでしょうか。(クリックすると回答)
教師等の学校側に,生徒がとがった針を刺したダーツを投げるという危険な遊びをする予見可能性があり,それを防止することができたかどうかにかかってきます。
それは事故の原因が,けんかやいじめ・校内ではやっていた一種のいたずらに基づくものであれば,突発的な事故ではありませんから,学校としては,当然に予見して防止する義務があったと考えられます。
しかし,なかなか,けんかやいじめの徴候については発見が難しい点がありますので,情報を得る努力をしない者ほど,あるいはとぼける者ほど責任を追及されないという不公平な結果が起こります。
そこで,被害者救済の観点からは,日常的に児童にどこまで注意を呼びかけて事故あるいはいじめの防止に努めていたかを安全配慮義務の内容とすべきであると考えます。
だが,突発的な遊びによる事故であれば,それを予見して防止する安全配慮義務を認めることは難しいでしょう。
なお,既に申し上げたとおり教師等がそばに連れ添って監視することが当然に予定をされたり,義務づけされるわけではありませんが,
そのような遊びをしていることが,職員室から歓声等によって容易に発見あるいは予測ができたような場合には,安全配慮義務違反が認められると考えます。
それは,居残りの許可がない場合であっても同様であると考えます。
むしろ生徒がいるはずのない教室で騒ぐ声が聞こえていた状況であれば危険な遊びをしていることが予見できた可能性が高いと言えます。
(1)学校は,公立であれば設置者として国・地方自治体が負います。私立であれば教師の使用者として学校が使用者責任を負います。
(2)教師・校長は,公立であれば責任を負うことはありませんが,私立でも中学生となれば責任能力があるので代理監督者(民法第714条2項)として責任を負うことはまずないと思います。
(3)仮に,いじめあるいは集団暴行による事故であるとすれば,加害者生徒が責任能力がある場合には本人が責任を負います。中学生ですから責任能力は通常は肯定されます。
なお,そのような危険な遊びあるいはいじめについて日常の監督義務違反が認められれば親が責任を負う可能性があります。
いじめや集団暴行ではなく,遊びであった場合には被害者である生徒にも,そのような危険な遊びに参加したことに過失があるとされて,過失相殺によって損害が減額される可能性があります。