Q学校での柔道練習中に脳損傷になり後遺障害が残りました。賠償請求はできるのでしょうか。---子ども・教育専門の むさしの森法律事務所へ
学校での武道の必修化が予定されています。柔道は,その中でも多数を占める可能性があります。
そして,体育授業・部活で死亡あるいは重度後遺障害となる事例の半数近くが柔道と言われています。
今後の対応として,十分な学校による体調管理を含む制度作りを期待しておりますが,確率的には発生の可能性が決して低いとは言えません。
柔道の基本は,受け身です。しかし,受け身が十分でないから受け身を練習する。
この場合の受け身は,現実には受け身にはなっていないのです。
柔道では,首(実質は延髄)を中心に,脳に加速度・減速度そして回転運動が働いてきます。
脳しんとうになったり,あるいは,その時には,意識の障害がなくても,積み重なれば脳出血(頭蓋内出血)のリスクが生じます。
アメリカでは,アメリカンフットボールによる脳しんとうによる重度後遺障害の実例の研究が国を挙げて行われており,その対策と事故後のケアが充実していると言われています。
そこで,学ぶべきは,アメリカンフットボールと同様に継続的に,脳への回転運動が加えられていくと,脳損傷が起こる可能性が極めて大きくなっていくと言うことです。
だからこそ,わずかな異変も見逃さない,また,体調不良を教師に子どもたちが伝えることができる環境作りを必要とするのです。
学校の授業あるいは部活では,本来は体調の管理をしっかりして,異変を気付くべきです。しかし,それにもかかわらず,練習を継続させて悲惨な事態となることがままありうるのです。
2013(平成25)年7月3日,東京高等裁判所は,1審の横浜地方裁判所の「体調管理の注意義務までなかった」という判断を覆して,1億8000万円の賠償を命じる判決を出しました。
だが,失った時間と将来を取り戻すことはできません。
今後の武道の必修化にあたって,精神論ではない,科学的な体調管理が行われて悲惨な事故が二度と起こらないことを祈ります。
しかし,将来的に同じ悲劇が繰り返される可能性は,ゼロでは無いどころか,大いにあり得るのです。