Q高齢者の虐待に対する法律は,どのようなものですか。---高齢者問題は専門の むさしの森法律事務所へ
高齢者虐待防止法,正式名称は「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が平成18年(2006年)4月1日施行されました。
虐待には,養護者による虐待,養介護施設従事者等による虐待の2種類があ,「虐待」には,身体的虐待以外にも経済的虐待も含まれています。
その有効な活用が期待されています。
高齢者虐待防止法,正式名称は「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が平成18年(2006年)4月1日施行されました。
高齢者虐待防止法によれば,虐待には,養護者による虐待,養介護施設従事者等による虐待の2種類があります。
また,「虐待」には,(1)身体的虐待,(2)ネグレクト(著しい減食・放置,養護者以外の同居人による虐待行為の放置),(3)心理的虐待,(4)性的虐待,(5)経済的虐待(高齢者の財産を不当に処分したり,不当に財産上の利益を得ることで,親族による行為も該当),の5種類が定められています。
2 高齢者虐待防止法では,どのようなことができますか。(クリックすると回答)
虐待の背景には,介護疲れ,特に家族によるものがあることを前提にしています。そのために,介護を巡る家族への支援・助言を通じて市町村と家庭とを連携する環境作りによる防止という国から地方自治体への努力義務的な面が強いとも言えます。他方では,養介護施設従事者に対しては,虐待防止を義務づけを明記している点は一歩前進と言えます。
強制的手段としては,次のような立入調査が認められており,それを拒んだりした場合には,罰金が課されます。
(立入調査)
第十一条 市町村長は、養護者による高齢者虐待により高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるときは、介護保険法第百十五条の四十六第二項
の規定により設置する地域包括支援センターの職員その他の高齢者の福祉に関する事務に従事する職員をして、当該高齢者の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。
(罰則)第三十条 正当な理由がなく、第十一条第一項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは高齢者に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさせた者は、三十万円以下の罰金に処する。
3 高齢者が現実に身体的な虐待がされている場合に有効に機能するのでしょうか。(クリックすると回答)
家庭でも施設でも,仮に身体的虐待があったとして表面化することは難しいと思います。また,それを裏付けるだけの証拠が収集しにくいということがあります。
立入調査権を発動するためにも十分な準備が必要でしょう。また,そもそも虐待の訴えを本人が行うことができるのか。あるいは,本人の判断能力が低下してきている場合に,その訴えが正しいのか,検証が必要な場合もあるでしょう。有効に機能させるためには,高齢者に関する情報が正確に把握されて,それが市町村などの行政と連携している必要があります。そして,さらに,身体的な虐待が常態化している環境では個別の虐待を問題にするだけではなく環境を変える必要もあろうかと思います。つまり,在宅介護に限界があるなら施設介護,また,入所している施設に問題があるならば,施設を変更する等です。
4 高齢者が親族や他人に金銭を無心されている場合にはどうしたらいいのでしょうか。(クリックすると回答)
高齢者虐待防止法によれば経済的虐待に該当する可能性があります。しかし,同法でも特に防止や回復の規定を設けているわけではありません。高齢者に判断能力がある場合には,弁護士に相談依頼をして対策を考えていく必要があります。財産管理契約と任意後見契約をセットで弁護士と締結していくことが有効です。また,判断能力が低下ないし無くなっている場合には,成年後見制度を活用して財産の保全を図るべきです。